2023-12-13
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山では冬も汗をかく

13(トザン)日は【AJ MALLの日】特集|安全登山のための道具術

伊藤 俊明 
ライター・編集者

本好きが高じて企画・編集会社に勤務し、アウトドアをはじめとす る趣味の雑誌編集に関わったのちに独立。思う存分スキーを楽しむ ために夏に頑張るアリンコ系ライター・編集者。インタビューや道 具の紹介、解説記事が得意分野。

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 登山で着るウェアは単なる服ではなく、ひとつの道具。見た目も大切ですが、それよりも機能を優先して選ぶべきものです。季節や山行形態、寒がりや暑がりのような個人の体質に合ったものを選ぶのは、不快を軽減するためだけではありません。夏のような温暖な時期ならともかく、好天と悪天の差が激しい季節には、ウェアの選択ひとつが命を左右することもあり得ます。実際に山を歩いて経験を重ねることにくわえ、装備の知識を深めることで山での安全性を高めましょう。

 今回は寒い季節のベースレイヤーについて考えます。冬はもちろん、春のはじめや秋の終わりにも気をつけるべきウェアです。ベースレイヤーの基本的な役割や選び方については過去の記事「安全と快適の鍵はここにあり」もご参照ください。

安全と快適の鍵はここにありの記事へ

 秋や冬の寒い時期に着るものを選ぶとき、最初に欲しくなるのは保温性です。暖かくするいちばんの方法は、カサがあるものを身に付けること。厚みのある生地が空気を溜め込み、体から出る熱がその空気を温めてくれます。インサレーションウェアで保温するのと同じことをベースレイヤーでも行なうということです。このとき大切なのは2点。ひとつは体にぴったりしたものを選ぶこと。もうひとつは体温で温まった空気を逃さないようにすることです。

 体にフィットしたウェアを着ることで、素肌の上に空気の層ができます。これに風を防ぐウェアをレイヤリングすることで、体温で温まった空気を身にまとうことができます。ベースレイヤーがつくりだせる空気の層はごく薄いものですが、重ね着によってデッドエアをキープすることで、その薄さから想像される以上の優れた保温効果が得られます。

 ただ暖かくするだけなら、これを徹底すれば解決します。しかし、登山の場合はそう簡単には済みません。問題は、外がどんなに寒くても、動くと汗をかくことです。人の身体は運動することで熱を生み出します。運動が激しくなるほど発生する熱量は大きくなり、身体が温まり過ぎると、それを冷やすために汗をかきます。

 冬のウェア選びの難しさは、動いて体が温まる分を見越してちょうどいいウェアを選ぶことにあります。よく言われるように「歩き始めは寒いと感じるくらいがちょうどいい」のです。

インサレーションウェアの記事へ

ミニコラム:体にフィットしたウェア

ウールと化繊のウェアを上手に組み合わせる

 保温性の高さを謳うベースレイヤーにも各種ありますが、人気があるのはウールのベースレイヤーです。暖かく、快適な着心地がその理由です。

 ウールの糸は短い羊毛を撚り合わせてつくられています。縮れた羊毛の集合体であるウール繊維は、たっぷりの空気を含むことができます。ウールはまた熱伝導率が低く、ポリエステルの1/5程度という熱を逃しにくい(外の冷気を伝えにくい)繊維でもあります。

 さらにウールは吸湿率が高く、多くの吸着熱を発生させます。吸湿しながらも表面のスケールが水を弾くため、大量の汗をかかない限りはドライな感じが続きます。繊維のなかに取り込んだ水分は乾燥すると放湿されるため、化学繊維にはない自然な暖かさが続きます。

 こうした性質にくわえ、極細繊維のメリノウールは風合いもソフトです。暖かく、着心地がよく、臭いにくい、寒い季節のベースレイヤーには理想的な素材です。

 一方の化繊は、加工によってさまざまな特徴を与えることができる素材です。裏地を起毛させたり、立体的に編んだりすることで空気を多く含み、保温性を高められます。ザ・ノース・フェイスが採用する「光電子」のように、体から出る遠赤外線を利用して保温効果を高める素材もあります。

 ウールにはない化繊の大きなメリットが、汗処理に優れていることです。前述のように山では冬も汗をかきますが、保温性を重視したウールのウェアとミレーのドライナミックのようなウェアを組み合わせることで、保温性と汗処理を両立することが可能になります。多くのベテランが行なっている、冬の実践的なレイヤリングです。

ミニコラム:冬の実践的なレイヤリング

 素材とともに注目したいのがウェアのデザインです。当たり前のことですが、体温の低下を防ぐには肌の露出を抑えること。バラクラバにもなるフードや、サムホールを備えて手の甲までカバーする長めの袖は有効なディテールです。適切なレイヤリングにくわえ、ビーニーやグローブなどのアクセサリーを上手に使うことでより効果的に寒さを防ぐことができます。

 季節や山行形態、自分の体質に合ったウェアを選んで身につけることはもちろん大切ですが、複数のウェアを重ねて行動する寒い季節は、ただ着ていればいいということにはなりません。快適の秘訣は先を見越したこまめな調節です。熱いと感じてから脱ぐのではなく、このまま歩き続けると熱くなりそうだと感じたら早めにジャケットを脱いだり、ジャケットが脱げない状況であればベンチレーションを開いたり、ファスナーを開けたりして風を入れましょう。逆もまたしかり。休憩で止まったら、寒いと感じる前にジャケットや防寒着を身に付けます。いちど冷えてしまった体を温めるのが簡単でないということは覚えておきましょう。

ミニコラム:バラクラバにもなるフード

(文=伊藤俊明 写真=岡野朋之)

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