「ツェルトは持っているけど、使ったことがない」。今回の講習には、そんなベテラン登山者たちが集まりました。ベテランにもかかわらず、道具の“実践的な使い方”に自信が持てない——それは多くの登山者に共通する課題です。ココヘリ安全登山学校の人気プログラム「ツェルト講習」は、そうした“もしも”の備えを体で学ぶ場。御岳山のふもとで行われた講習会では、講師の指導のもと、11名の参加者がツェルトの基本から応用までを体験しながら学びました。
講師は、まず最も基本的な使い方である「ツェルトを被る」方法を紹介。さらに、傘やトレッキングポールを利用した即席の屋根づくりや、複数人で被ることで体温を守る方法など、状況に応じた実践的な工夫も指導しました。「道具を使いこなすのに必要なのは、情報じゃなくて“手を動かすこと”です」。また、被るタイプの「DKシェルター」や、テント型に張る方法も紹介。ポールやペグがないときには、木や石を使うというアドバイスも。「シェルターって、自分と自然との対話なんです。あるもので、何ができるか。それを考える癖をつけてほしい」と講師。参加者から「ツェルトにマジックテープをつけると紐を結ばなくてすむ」といった実用的なアイデアも飛び出しました。
講習の締めくくりは、リアルな遭難シナリオ。突然転んで怪我をしてしまった!まったく動けません!山から自力で下りられません!携帯の電波も入りません!さあ、これからどうしますか?!
「登山中に仲間が怪我をして動けなくなった」「天候が悪化し、下山できない」——そんな状況を想定して、参加者たちはツェルトを使いながら、**自分たちの判断で“生き延びる計画”**を立てました。どこに張るか、誰が救助を呼びに行くか、どうやって暖をとるか……。各チームが導き出した答えはそれぞれ異なり、そこにこそ「正解のない登山のリアル」がありました。知識や技術だけでは足りません。状況に応じて“考え、選ぶ力”こそが、本当のセルフレスキューなのだと学びました。

講習後、「テント型に張るのって思ったより難しい」「自分のツェルトが意外と小さかった」といった率直な声が多く聞かれました。けれど同時に、「本当に使えるようになってよかった」「もしもの夜、落ち着いて行動できそう」と、自信に変わる表情も。登山の安全は、知っているだけでは守れません。ツェルト講習は、道具を“生きた道具”に変えるきっかけになる講座です。山を愛するすべての人に、一度は参加してほしい。そんな声が、講師と参加者の間から自然と生まれた1日でした。
まず、実際のフィールド(現場)で実践形式で行うことがいかに重要かを感じました。実際に体を動かすことで、自分の中に多くの「気づき」を得ることができました。ペグ等あると便利ですが、荷物が重くなるリスクが増えるので、自分の技量で持っていくもの、持っていかないものを選別するスキルが必要だと改めて感じました。また、参加者に対する講師・スタッフの方々の人数バランスが適正だったと思います。非常に質問がしやすい雰囲気を作ってくださり、リラックスして学ぶことができました。今回の講習を通じ、危機に直面した際は、単に道具に頼るだけでなく「自然にあるもの」と「自分の知識・経験」の全てを駆使して状況を乗り切ることが重要なのだと深く学びました。今後の登山や業務に活かしていきたいと思います。
ココヘリは“捜索サービス”ですが、捜索・発見して救助がなされるまでの間、会員様ご自身と仲間を守る力を、皆さんと一緒に育てていきたいと考えています。ココヘリではWeb講習・実技講習を定期的に開催しています。ぜひ、次回のココヘリ安全登山学校へご参加をお待ちしております。
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