2023-10-23
捜索実績

ココヘリ シーズン レポート 2022年10~12月編

宮川 哲
編集者

山岳•アウトドア関連の出版社勤務を経て、フリーランスの編集者に。著書に『テントで山に登ってみよう』『ヤマケイ入門&ガイド テント山行』(ともに山と溪谷社)がある。

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目次

〜会員費でカバーされる捜索・救助活動の範囲

 今回のシーズンレポートは、2022年の10月~12月の3ヶ月間を取り上げます。この季節は、秋から冬へかけての季節の変わり目でもあり、山登りにはむずかしい季節でもあります。何がむずかしいのかといえば、一日にして季節がガラリと変わってしまうことが多々あるからです。冬の装備を何もしていないのに稜線で雪に降られてしまえば、身動きならず、なんてことにもなりかねません。 過去にも実際に悲惨な事故がありました。1989年の10月初旬、立山三山の稜線で10人のパーティが吹雪に阻まれて遭難。8人が低体温症で亡くなってしまうという大事故でした。これは太平洋の沿岸を移動していた台風の影響により、季節外れの強い寒気が立山エリアに呼び込まれたことが原因とされています。10月初旬の立山といえば、まだ秋の真っ只中。草紅葉が地表を覆い、この季節にしか見ることのできない立山の紅葉を楽しめる季節だったはず......。それでも、“想定外”だったり、“思いもしない”ことが起こってしまうのがこの季節の特徴ともいえるでしょう。事前に天気傾向を確認し、相応の装備が整っていたとしても万全ではありません。つねに、「もしも」があるかもしれないと考えておく心の準備が必要です。

これは雪が降る前の10月初旬の立山の草紅葉。夏の立山とはまたちがった様相を見せてくれる、秋ならではの風景だ。でも、突如として吹雪に見舞われ、事故が起こってしまったのも、まさに写真と同じこの季節だった。

1.データから見る遭難事案の傾向

 この3ヶ月間に、ココヘリへの通報があった件数は全部で11件でした。遭難事案の「発生域」はどこであったか、「通報者」がだれであったか、「通報の種類」は何であったかなど、今回もいままでのシーズンレポートと同じ指標で、各表やグラフをつくっています。まずは、こちらをご覧ください。

ここに掲載した表、グラフは全部で6つ。内容は以下の通りです。

 

①発生域と日付(事案の発生した山域と日付を地図上に表示)

②通報者(ココヘリへ最初に通報した人が、遭難者とどんな関係にあるのかを示したもの)

③通報の種類(通報に至るおもな理由)

④パーティの人数(対象事案の入山時の人数)

⑤事故の発生原因(事故となってしまった原因)

⑥安否(事故の結果としての安否状況)

 

2.家族の不安と変わらぬ傾向

 直前の夏真っ盛りのシーズンに比べれば、遭難事案の発生件数はかなり少なくなっています。7~9月期の27件に対して、10~12月は11件。前期比では16件の減少です。ちなみに以下の棒グラフは、2021年の11~3月期以降の4シーズンの発生件数を比較したものですが、この秋から冬にかけてのシーズンがいちばん少ないのがわかります。やはり、季節の変わり目だけに、あくまでもほかの季節に比べてはという意味ですが、山に入る人が少ない傾向があるのかもしれません。または、むずかしい季節だけに慎重になっている人が多いのかどうか......どちらにせよ、事案の発生件数が少ないのはとてもいいことです。

 ただし、11件の内容を検証してみると、いつもと変わらない構図が見えてきます。まず、「通報者」のおよそ82%は家族から。そして、「通報時の種類」は連絡不通が64%、GPS反応なしが18%です。「事故の発生原因」は下山遅れが64%で計画の変更が9%。これらの数字が表しているのは、山に入った対象者との連絡がつかなくなったことに不安を覚えた家族が、通報を入れるという図式です。もちろん、何かがある場合もあるので、通報を入れることがまちがっているわけではありません。ただ、山では電波が繋がらない場所があったり、GPSの軌跡がたどれないエリアがあるといった細かな情報を、本人が事前に家族と共有しておくことも大切です。家族に余計な不安を抱かせないことも、山に入る側の責任でもあると思います。 同様に、山では体調や天候などによって、下山が遅れてしまうことは多々あります。その可能性があることも家族には伝えておくべきでしょう。何よりも大切なのは、登山計画を家族にもしっかりと共有し、細かなところまで理解してもらうことです。 また、変わらぬ傾向という意味では、「単独行」の多さです。今回はなんと、91%の人が単独での入山でした。やはり、このむずかしい季節にひとりで山に入るのは、それだけでも危険なこと。単独行という余計なリスクを抱えてしまっていることを、忘れずにいてください。

3.二次救助という事案

 今回の期間のなかで、唯一の死亡案件となってしまった事故があります。単独での山行で、公的機関において捜索が続いていたのですが救助には至らず、家族からココヘリへも捜索の依頼が届いたものでした。 公的機関では数日間の捜索を続けており、遺留品から位置の特定はほぼできていたのですが、地形の険しさからヘリでの現場へのアプローチができなかったようです。つまり、本件では位置の特定よりも救出・引き揚げ作業のむずかしさがポイントとなっていました。そこで、ココヘリがとった手段は、現場からの引き揚げミッションを遂行できる技量をもった民間専門家の手配でした。いわゆる二次救助です。その流れのなかで公的機関、家族とも連携を持ち、行動計画書、地図などから詳細な滑落の現場を特定しました。翌々日、専門家チームは要救助者を発見し、ヘリでも吊り上げやすい場所へと移動。公的機関への航空隊への引き継ぎを行なっています。ココヘリではドローンやヘリを使った端末による位置の特定だけでなく、このように民間の専門家たちとの連携を持って、捜索の一端を担っています。 さて、このときの捜索に必要な費用についてですが、結果的に家族への負担はまったくありませんでした。従来のココヘリの機能に加え、「年間最大550万円」までの捜索・救助活動が提供されるようになっていたためです。

 ここで、今一度ではありますが、ココヘリのシステムを紹介しておきたいと思います。

 上の表にもあるように、現場での状況次第ではありますが、1.まずは警察・消防への連絡。2.ココヘリのコールセンターへ連絡。3.ココヘリによる提携民間ヘリの出動調整、公的機関との連携。4.ヘリ、ドローンなどによる捜索。位置座標を特定し、救助組織への共有。5.公的救助機関による一次救助。発見・救助に至らない場合は、一次救助に継続して、提携民間救助機関による二次救助を実施。こんな流れになっています。 ココヘリがjROと連携する前は、捜索救助サービスが適用されず、3フライトまでのヘリ捜索までが対象となっていました。でも、jROが加わったことで、二次救助での年間で最大550万円までの「役務の提供」ができるようになりました。 この制度の実現に向けてココヘリ側の担当となったのが、AUTHENTIC JAPANの専務取締役でもある八木澤美好でした。このあたりの話をもう少し詳しく聞いてみましょう。

4.山岳遭難対策制度の充実

 新制度では、民間捜索救助組織の手配もココヘリが実施、費用の立替も不要となりました。いままで通りの3フライトまでの無料のヘリ捜索に加え、すべての契約会員が年間最大550万円までの捜索をカバーされることになっています。 ここで強く言っておきたいのは、550万円までカバーされるのは「役務の提供」であり、保険のように費用が補填されるということではないということ。ココヘリは山岳保険を提供するシステムではなく、どこまでも「捜索を実施」する機関であること。この点を明確にしておきたいと思っています。 山での遭難はやはり、本人はもちろんですが、家族への不安や負担が大きくのし掛かってしまうもの。それを少しでも改善していけるように、制度を改善していくのはココヘリの使命だと考えています。そういった意味で、6月からスタートした新しい山岳遭難対策制度は、これまで以上に、会員に家族に寄り添った制度となりました。 こういった制度を整えていくこと、公的機関との連携、ドローンチームの育成のほか、受信端末の精度を上げていくなど、まだまだやることはたくさんあります。ココヘリが目指しているのは、悲惨な山岳遭難をなくすことです。でも、山はそんなに甘くはない。遭難がなくならないなら、そこに関わってくるみなさんの不安を減らし、負担を軽くしていくことが大切だと思っています。

AUTHENTIC JAPAN 専務取締役 八木澤美好

5.遭難のリスクを減らすために学び、備える

AJ MALLのご案内

 ココヘリでは、会員限定の特別価格で登山用品を揃えられる通販モール『AJMALL』を展開しています。こちらのモールでの購入金額のうち、10%が次年度の年会費から割引されるという仕組みで、安全登山に必要な用具の数々をラインナップしています。また、ただ単に販売をするのではなく、やはり「学びがあってこそ」のココヘリです。そこで、毎月13日を「ト・ザン」=「登山」の日として、この5月から用具にまつわる特集記事の掲載を開始しました。

 

 書き手は、数々のアウトドア雑誌での用具記事を手掛けるフリーライター・編集者の伊藤俊明さん。登山にも用具にも深い知識と経験をもとにした、わかりやすい記事展開をしてくれています。この10月13日に掲載された最新のテーマは「足元にもウールがオススメ 穴が開いたら無償で交換!? 生涯保証のウールソックス ダーンタフ」です。こちらもぜひ読み込んで「学び、備えて」、秋から冬へと続く季節を、安心、安全に過ごしましょう。

足元にもウールがオススメ

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