登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。登山歴は30年以上、ガイド歴は10年以上。得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。山と人をつなぐ架け橋をめざして活動しています。 公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅠ 総合旅行業務取扱管理者
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世界最高峰・エベレストへの7回登頂や世界七大陸最高峰のガイドとしての登頂を筆頭に、世界の名峰へのチャレンジをサポートし続けてきた国際山岳ガイド・近藤謙司さん。
数々の海外公募登山隊や登山教室を企画する株式会社アドベンチャーガイズの代表取締役、公益社団法人日本山岳ガイド協会理事、山の日アンバサダーなど様々な肩書を持つ近藤さんに、ココヘリ安全登山学校へ寄せる想いを伺いました。
近藤さんがココヘリ安全登山学校に携わる契機となった出来事のひとつが、2017年に発生した那須雪崩事故。この事故を通じて、安全登山に関する上質な教育の必要性を痛感したそうです。
近藤さん:事故の原因や責任を云々するつもりはありませんが、学生や指導者など学生山岳部に関わる人々が安全登山に関する知識や技術を学ぶ場がなかったことは事実です。
事故の翌々月に私が登壇した全国山の日協議会の講演会には、実際に山岳部の活動が休止になってしまった栃木県の高校生も聴講に来てくれて「山に行く機会がなくなってしまった」と残念がっていたんですよ。
各教育委員会や文部科学省にも安全登山を体系的に教育する方針はなく、登山業界の一員として「これは何とかしないと」と強く感じました。
近藤さん:ココヘリは学生山岳部に端末を1年間無償提供していたり、オンライン講習会はもちろん学生は実地講習へもワンコインで参加可能だったりと、若い世代へのアプローチも積極的なんです。実地講習ではまだ少ないのですが、オンライン講習を受講してくれている学生はけっこう多くて、登山先で「近藤さんですよね!?」と声を掛けられたりと、徐々に手応えを感じています。
世の中に登山学校はたくさんありますが、基本はガイドや企業の営利のために開催されています。けれどもココヘリ安全登山学校は会員向けのサービス、社会貢献としての位置づけでもあるのです。これをチャンスに、より上質な安全登山教育を広げて行きたいですね。
近藤さんの想いは若い世代だけに向けられたものではありません。近年ますます増加傾向のソロ登山者に対しても、届けたいものがあるようです。
近藤さん:そうした未組織登山者だからという理由だけで、登山組織で当たり前に提供される情報や教育を受けられないのは不平等じゃないですか。
ソロ登山者の人たちにも、正しい技術・知識を身に付けてもらえる場を提供したいという使命感を抱いています。実際にココヘリ安全登山学校の参加者は、他の登山学校よりソロの人が多いイメージですね。
当初はコロナ禍でオンライン講習が中心でしたが、実地講習が始まって近い距離で接するうちに、より生徒さんへの感情移入が高まって来ました。
近藤さん:オンライン講習での質疑応答でも「山友はどうやって作れば良いですか」と聴かれることもありますが、まずは実地講習へおいで!と伝えたいですね。
ソロ登山者で山岳遭難への意識も高いからこそココヘリに入会する……そうした同じ価値観を持った人同士が、安全登山学校を通じて信頼できる山仲間になるというのが将来的には理想ですね。
山岳会ほど厳しくないけれども、WEBやSNSだけでつながった即席登山パーティーよりは緊密。ココヘリ安全登山学校で学んだ受講生同士だからこその、安全なグループ登山ができるのではないでしょうか。
ココヘリ安全登山学校の講習中はずっと喋りっぱなし、いつも喉がカラカラになるという近藤さん。どんなスタンスで講習に臨んでいるのでしょうか。
近藤さん:ココヘリ安全登山学校の生徒さんは比較的ビギナーが多いイメージです。登山歴が何十年とある人であっても、基本的なことを意外と知らない。そんな生徒さんたちだからこそ、山が嫌いにならないように優しく接して平易な言葉で伝えるようにしています。
近藤さん:生命に関わる局面などで何故そのテクニックを正しく実践しないといけないのか、本質から理解してもらうためにピリっとスパイスを効かせることはあります。登山に潜む危険を「予見する」能力はとても重要で、日常生活にも必要です。そういう大切なことはメリハリを効かせた方が伝わるかなと。
生命の危険があるスポーツって、登山やアウトドアスポーツ以外には少ないじゃないですか。楽しいだけではない自然の厳しさは、認識して欲しいですよね。
最後に、ココヘリ安全登山学校へ参加を検討している方へ、近藤さんからメッセージを寄せてもらいました。
近藤さん:数百人が参加するオンライン講習では、質疑応答だけで1時間を超えることもありますが、全ての質問に答えるようにしています。誰に聴いたら良いかわからない、聴く人がいない、そんな生徒さんにとってはすごく重要だと思うからです。
一方的に壇上から話すのではなく相互にコミュニケーションを取れるところが、ココヘリ安全登山学校のオンライン講習の最大の魅力ではないでしょうか。
近藤さん:オンラインで知識を得ることはできますが、経験則は実際に山を歩くことでしか身に付きません。知識と経験則を50:50でバランス良く自分のものにして欲しいと思います。
ココヘリを持つ意味、山岳保険に加入する意味、登山計画書を提出する意味、これらを本質から理解することで、これまでの我流の登山がいかにリスキーだったか気付くことでしょう。そんな目から鱗の知識や年々アップデートされている最新の登山技術を身につける機会を、ココヘリ安全登山学校を通じて多くの人に届けたいと思っています。