【連載企画】COCOHELI STORIES 「いってきます」と「おかえりなさい」の間に。


vol.55 登山ガイドとして山に入り、休日もまた山へ向かう。そんな山づくしの日々を送る健太さんと麻美さんご夫妻。ご夫婦で同じ趣味を楽しみながら、山の魅力を多くの人へ伝えるお二人の日常にお邪魔しました。

お二人と山との出会いについて伺いました。麻美さんはマウンテンバイクを健太さんと楽しんでいたのがきっかけだそうですが、健太さんは子どもの頃から山に親しんでいたそうです。「僕は子どもの頃に父と奥多摩の山によく行っていたんです。山で遊ぶのが当たり前でした。でも中学生くらいで一度山から離れて、それこそ30歳くらいまでは完全にシティボーイでした(笑)再び山へ戻るきっかけになったのは、やはりマウンテンバイク。自転車仲間の中に登山が好きな人がいて、登山に誘われたんです。そこからですね。気が付けば休日は山へ向かう生活になっていました。最初は登山だったんですけど、次第にクライミングやボルダリングにも夢中になりました」


そんなお二人が特に好きなのが、外岩でのボルダリングです。「ボルダリングというとジムを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、僕らが好きなのは本物の岩です。御岳など、岩があるところへ行って登るんです。次はどこへ行こうかって、ガイドブックを見る時間も楽しいんですよ」そう話しながら、お気に入りのガイドブックを見せてくださいました。「家でもそんな話ばかりしています。山の写真や岩の写真を見ながら、“ここ面白そうだね”“次はここに行こう”って話しています。そういう時間も好きなんです」と健太さん。おやつを食べながらガイドブックを広げ、次に登る山や岩の計画を立てる時間も、お二人にとって大切なひとときです。


「ボルダリングって一番ピュアなクライミングなんですよ。ロープも使わないし、余計な道具もほとんどない。クライミングシューズとチョークだけ。本当に体ひとつで岩に向き合うんです。登る能力がそのまま結果になる。道具でごまかせないし、運でもない。それが面白いんですよ」と健太さん。登山もクライミングも、お二人にとっては特別なイベントではなく、自然体で過ごす休日そのものです。「休みが合えば一緒に山へ行きます。岩を登りに行ったり、山を歩いたり。クライミングの魅力はやっぱり達成感。経験を積むことで、同じ岩でもこれまで登れなかったラインが登れるようになる。その瞬間はやっぱり嬉しいです。少しずつ成長していく感覚があるんです」とお二人はにこにこと話してくださいました。
山ではほとんど喧嘩をしないというお二人。「普段はありますよ(笑)。でも山って合理的な判断が必要なんです。危険もありますし、その時に一番いい選択をお互いに考えるので意外と揉めないんですよね。合理的ならそれでいこうってなる。山にいるときの方がお互い冷静かもしれません」そう話す姿からは、長年培われた信頼関係が自然と伝わってきました。


そんなお二人は現在、それぞれ登山ガイドとしても活動しています。「実は夫婦とも郵便局で働いていました。金融商品の相談や保険の提案をする仕事を20年くらいやっていたんです。でも、いつか辞めたいねという話は10年くらい前からしていました」思い切って退職したときも、次の仕事は決めていなかったそうです。「なんで二人同時に辞めるのってよく言われました(笑)。でもお互い譲れなかったんですよね。やりたい気持ちが同じだったので。退職後、一週間かけて黒部周辺を縦走した経験が大きな転機になりました。7日間かけてゆっくり100キロくらい歩いたんです。その時に日本中から来たいろんな登山者と出会いました。仲のいいご夫婦、学生さん…いろんな出会いから、山と人がつながる仕事ができたらいいなって思ったんです。人が好きなんだと思います」と、その経験をきっかけにお二人はガイドへの道を歩み始めたそうです。

「山って楽しいんだって思ってもらえたら嬉しいです。山を通して人生が少し楽しくなったり、新しい世界を知ったり。そんなきっかけになれたらいいなと思っています」と健太さん。そんなお二人がココヘリに入会したきっかけは、山の先輩の一言。「山に行くなら入っておけよ、と先輩に勧められたんです(笑)。雪山も始めていたので、二人で入っておこうかと入会しました。今はそれぞれ違うツアーのガイドに入ることも多いので、別々の山へ行くことが増えました。そんな時はお互いの下山を見守りますし、一緒に行く時は実家にも行き先を伝えています。何かあったら連絡してねって」

次はどの岩を登ろうか。そんな会話を重ねながら、自分たちらしい歩みを続ける麻美さんと健太さん。山が好きだからこそ、その魅力を多くの人へ届けたい。山を通じて誰かの世界を少し広げたい。そんなお二人の歩みに、ココヘリはこれからも寄り添い続けます。
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