石井スポーツ×ココヘリ 安全登山学校 実技講習「登山における応急処置」の講習内容、開催概要、参加方法を案内します。

2026年7月25日、石井スポーツ新宿西口店にて、約30名の方にご参加いただき、石井スポーツとココヘリ共催の安全登山学校を開催しました。今回は、山岳医の稲田真氏を講師に迎え、「登山における応急処置」をテーマに、座学と実技を交えながら学びました。講習では、応急処置の技術だけでなく、「登山者自身が状況を評価し、判断する力」の大切さに焦点を当て、実践的な学びを深めました。
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講習の冒頭で稲田先生は、「現場で評価をするから判断ができる」と話されました。傷病者の状態だけを見るのではなく、周囲の環境や危険要因も含めて状況を把握することが重要です。また、「習ったからやってみよう病にならないこと」という言葉も印象的でした。応急処置はマニュアルどおりに行うことが目的ではなく、その場の状況に応じて合理的な判断をすることが求められます。山岳環境では救助や医療機関への搬送までに長い時間を要する場合があります。そのため、登山者一人ひとりが適切な判断力を身につけることの重要性を学びました。
応急処置を行う際に最も重要なのは、自分自身の安全を確保することです。傷病者に近づく前に周囲の安全を確認し、二次災害の危険がないかを把握します。また感染予防の観点からも、グローブやフェイスシールドなどの携行が推奨されました。「助ける人が助けられる側にならないこと」これは山岳救助の基本であり、参加者の皆さんも改めてその重要性を認識していました。
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実技では、意識のない傷病者を発見した場面を想定し、一次評価の流れを体験しました。まずは安全確認を行い、①声をかける→②音を出す→③反応を確認する、といった手順で状況を評価します。意識や呼吸の有無を確認したうえで、必要な対応を判断していくプロセスを実践的に学びました。
さらに、「突然胸を押さえて倒れた登山者」や「崖から滑落した登山者」など、実際の山で起こり得るシチュエーションを想定したグループワークも実施。参加者同士が傷病者役と救助者役に分かれ、それぞれに与えられた状況設定をもとに応急対応を体験しました。傷病者役の参加者は、稲田先生から指示された症状や状況になりきりながら、救助者からの問いかけに回答。救助者役は「何が起きているのか」「まず何を確認するべきか」を考えながら、状況評価や情報収集を進めていきます。参加者同士が積極的にコミュニケーションを取り合い、時折笑い声も聞こえる和やかな雰囲気の中で講習が進行しました。参加者の皆さんが生き生きと実践に取り組む姿からは、「ただ知識を学ぶ」のではなく、「実際の現場で考えて行動する力」を身につけようとする熱意が感じられました。
一次評価の後には、
・保温する
・楽な姿勢をとってもらう
・更なるけがを防ぐ
・不安を和らげる
といった対応も重要であることが紹介されました。応急処置は傷病の治療だけではなく、傷病者が少しでも安心し、安全に救助を待てる環境を整えることも大切です。
講習の後半では、二次評価について学びました。一次評価で命に関わる緊急性を確認した後は、傷病者をできるだけ快適な状態にしながら、さらに詳しい情報を集めていきます。稲田先生は、「処置ばかりに意識を向けず、まずは情報を集めて評価することが大切です」と話されました。傷病者から症状や既往歴、服用している薬、行動状況などを聞き取り、呼吸器・循環器・神経系に重大な問題がないかを確認していきます。その情報は、現場での判断だけでなく、医療機関へ引き継ぐ際にも重要な役割を果たします。
講習では、呼吸困難や脱水、熱中症など、登山中に起こり得る症状への対応についても解説されました。呼吸が苦しそうな方に対しては、まず安心させて深呼吸を促すこと。また、脱水や体調不良が疑われる場合にも、決めつけるのではなく、状況を整理しながら判断することが重要であると学びました。特に印象的だったのは、「何が原因かを断定する必要はない」という考え方です。登山者が行う応急処置は診断ではなく、その場でできる最善の対応を選択すること。限られた環境の中で、傷病者の状態を悪化させないことが大切であると学びました。
夏山シーズンに欠かせないテーマとして、熱中症についても詳しく解説が行われました。熱中症への対応で大切なのは、「行動を中止する決断」と「救助要請を行う決断」の2つです。暑い環境で体調不良を感じた場合は、無理をして行動を続けるのではなく、早めに休憩を取り、体を冷やすことが重要です。また、会話がかみ合わない、ぼんやりしているなど意識障害が見られる場合は、重症化している可能性があるため、速やかな救助要請が必要になります。さらに近年注目されている「水分の摂り過ぎによる体調不良(低ナトリウム血症)」についても紹介されました。「とにかく水をたくさん飲む」のではなく、自身の体調や状況を見ながら適切に補給することの重要性を学ぶ機会となりました。
ケガへの対応も“合理的な判断”から
講習の最後には、登山中によくある捻挫や転倒によるケガへの対応について学びました。固定の目的は、「安全かつ快適に下山すること」です。診断名を当てることではなく、「その部位が使える状態なのか」「安全に移動できる状態なのか」を見極めることが重要であり、必要に応じてテーピングや固定を行います。ここでも繰り返し伝えられたのは、「習ったことをそのまま行うのではなく、その場に応じて合理的に判断すること」でした。
「山岳看護師に興味があり参加しました。応急処置の考え方や判断のポイントを学ぶことができ、とても勉強になりました。今回学んだことをきっかけに、これからさらに知識や技術を身につけていきたいと思います」
「講習はとても分かりやすく、楽しく学ぶことができました。山での事故や体調不良に遭遇した際、まずは落ち着いて状況を評価することの大切さが印象に残っています。有意義な時間を過ごすことができました」
山にはさまざまな危険が潜んでいます。しかし、正しい知識と冷静な判断力を身につけることで、万が一の場面でも適切な行動につなげることができます。今回の安全登山学校では、「何をするか」だけでなく、「なぜそれを行うのか」「今本当に優先すべきことは何か」を考える大切さを学びました。参加者の皆さんの生き生きとした表情からも、「自分で考え、判断し、行動する」という今回の講習テーマがしっかり伝わっていたことが感じられました。
ココヘリはこれからも、登山者の皆さまが安全に山を楽しめるよう、学びと実践の場を提供してまいります。